2010年10月23日土曜日

福森伸という人



僕が26歳の時。
まだ通所授産施設の職員をしていた時に同僚に誘われて講演会に行った。

鹿児島にある「しょうぶ学園」という複合施設の施設長の話を聞きに。

その時僕は悩んでいた。
今目の前にいる障がいのある人、特に重度の人に対して自分のしている支援は正しいのだろうか?
というより僕が毎日している事は支援なのだろうか?
なにか脱却する方法を探していた。

そんな時だった。

その施設長は福森伸という人だった。
体はガッシリとしていて、力が溢れてるように見えた。
ヒゲを生やしているルックスは恐そうにも見えた。

その人の口が出て来た言葉の一つ一つは考えた事も無いのに、まるで自分がそうしたかった事かのように聞こえた。
講演を聞きに行って涙が溢れたのは今までこの1回だけだった。

「無理に型にはめるのは障がいのある人にはフィットしてないよね」
「好きにやらすんです。何かを生み出す力はあるから」
「その人の作品を大切に扱う事はその人を大切に扱う事」
残っている言葉を挙げていくときりがない

あの時に福祉を辞めないで今も続けているのは福森伸という人を知ってしまったからだと思う。

そして28歳の時に福森さんが基調講演をし、その後に僕がパネルディスカッションをする機会があった。
福森さんの相変わらずの話。
全員が何か大きな柔らかなモノで殴られたかの様な感覚で静まり返っていた。

28歳の僕はこの場をナイフで切ってやろうと思った。
28歳の僕にはそれしか方法を持っていなかった。

まだその当時はバザーによる販売が当たり前で、一般の店舗に福祉施設の商品が並んでいる例はほとんど無かった。
なので僕は冒頭に「とにかくバザーは止めると決めてそこからスタートしました」と話し、その時に勤めていた事業所での販売方法を話し始めた。

冒頭の一言を言った時、一人の大爆笑、他の人は静まり返っている。

その最前列で爆笑していたのが福森さんだった。
ひとしきり爆笑した後で「失礼!!」と言って笑いを堪えた。

その福森さんを見て僕は笑ってしまった。
きっと「言いやがったこの小僧!」と思ってくれたのだと思う。

先日僕の大好きなデザイナー「ナガオカケンメイ」がしょうぶ学園と福森さんについて書いた記事を読んだ。
忘れかけていたかも知れない。

ドキッとした。

28歳の時に福森さんに見学させて欲しいとお願いをした。
福森さんは「今改修工事をしているから終わってからおいで」と言ってくれた。

でも僕はまだ行ってない。

何故か今行くべきだと思った。
まだまだ小僧の自分を確認しに、そして支援の在り方を考えに、そして単にその空気と作品に触れに。

今日見学の申し込みをしょうぶ学園にした。

ドキドキしている。
この気持ちは楽しみなのだろうか。

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